日日是好日

よく生きている

モラトリアムに乾杯

 

 

バイクで日本一周を目指す二十歳の青年は

まっすぐな字で日記を綴っていた

 

宇野のドミトリーで出会った大学生だ

 

「二十歳のとき何してましたか?」

と聞かれたけれど本当に何していたのかすぐ答えられず

馬鹿していたよ、なんて茶化してしまった

 

本当は私は二十歳の時も

必死に自分に向き合って生きていた

 

 

私が豊島に出会ったのはいつだったか

おそらく彼と同じくらいの歳の時だったはずだ

 

あれから豊島で働いて、

嫌というほどあの場所にはいたのに

あそこに何かしらの答えを求めて

今日も足を運んでしまった

もうそこに答えなんてないとわかっていても

 

 

心臓音のアーカイブで自分の2年前の音をきく

何故か今の方が音が速い

理由はわかる、

コメントをちゃんと考えていなくて

とても時間がかかったからだ

 

2年前の私の音は

これから先もその隣の人物と

一緒に心臓を鳴らしていけることを

信じて疑わぬひたむきな音だった

 

今一度ひとりに立ち返って

はじめてひとりで自分の心臓音に向き合った

君が一生懸命生きている音がする、

と言ってくれた彼の言葉を思い出した

 

あれから2年だか3年だか

別の人を想って私は泣いているし

これから2年もしないうちに

私はまた誰かを愛せるのだろう

 

自分の恋愛脳をどうにか出来ないものだろうかと

流れていく水に問いてみたけれど

水は変わらず溢れ、ただ流れていき

大きな水溜まりを創っていくだけだった

 

ある種の諦めを教えてくれる場所は

なによりも救いのある場所なのかもしれない

 

さぁ東京に戻ったら

好きな酒場に行って、お土産を渡そうかな